苛烈な死の舞


 狂いそうな感情を閉じ込め
 獣の瞳で人を見て
 青年は戦場を駆けた
 
 傷つけることよりも
 自分が傷つくことが怖かったから

 青年はやがて兵器と化した
 手を出せば躊躇いもなく噛みついてくるような
 立派なケダモノになった
 
 最期の一人が倒れるまで
 戦場で続くは死の円舞

 青年も己の武器を振るい
 何度でも死の恐怖に抗った
 
 しかし 裂かれるような痛みに目を瞠ったとき
 青年の腹部は赤く濡れていた
 焼けるような熱を持って溢れたのは 守り続けた命の糧

 引き裂かれた心の傷が
 今 カタチになって青年の命を死にさらす
 しかしそこにあったのは
 恐怖よりも残酷な安堵感だった

 そうしてケダモノは人間に戻る


     一覧に戻る