朽ち果てた騎士
 姫を守るが騎士の役目
 そのためになら傷つくことさえも 誇り
 自分のことは もうどうだっていい
 姫を守るが騎士の役目
 そのためになら死ぬことさえも 名誉
 自分のことは もうどうだっていい
 何も言わない姫の手を引いて
 ひたすらに自分を犠牲にする
 見えるのは姫を狙う敵だけ
 聞こえるのは剣の擦れる音だけ
 我を忘れて戦った後で
 騎士は姫を振り返った
 傷ついた騎士が握っていた姫の手は
 いつの間にか氷のように冷たくて
 瞳孔の開いた姫の瞳には
 乾いていない涙のあと
 血の気を失った姫の唇には
 まだ消えていない毒の香り
 傷つくよりも傷つかれる方が 哀しいと知った瞬間
 死ぬよりも死なれる方が 苦しいと知った瞬間

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