六畳一間


 思えばあっという間
 今までお世話になりました
 空っぽになった姿を見ていると
 大きなバッグ一つ抱えて
 あなたと知り合った日のこと思い出すよ

 初めての一人暮らし
 何もできなかったあたし
 洗濯機の使い方から危うかった
 でも今は料理も上手になったでしょう
 どんなことだって一人でできるんだから

 散らかしっぱなしの日もあった
 大勢の友達と馬鹿騒ぎした日もあった
 あの人と二人 本音を語った日もあった
 だらだらしていただけの日もあった
 たくさんのあたしがここにいた

 膝抱えて泣いた日もあった
 嘘吐きで外では滅多になかないあたしだから
 あなたはあたしの貴重な涙を見た
 数少ない存在ってことになる
 受け止めてくれてありがとう

 たくさん汚しちゃったな
 傷も付けちゃったみたいだ
 こんなにしちゃったの今までであたしくらい?
 でも心配しないで
 最後だし全部綺麗にしてあげる

 あなたは何人もの人をここに入れて
 何人もの人の本当の姿を見つめてきたんだよね
 何も言わないで でも優しく
 短い間だったけど あなたのお陰で
 あたしもここであたしを見つめることができた

 たくさんあるうちの一つ
 コンビニからも遠くて
 広くも新しくもない部屋だけど
 はっきり宣言しよう
 あなたはあたしの城だった

お別れの時間だね さようなら
 今度はどんな人が来るんだろう
 可愛い人だといいね
 綺麗好きな人だといいね
 でもあたしのこと忘れないでね

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